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骨塩定量検査

あなたの骨は健康ですか? 骨粗鬆症ってどんな病気?

大阪市立弘済院附属病院  内科  揖場和子先生 講演内容抜粋

 

骨粗鬆症とは骨がスカスカになって,もろくなる病気ですがちょっと詳しく説明します.


1.骨粗鬆症の頻度.

背骨の圧迫骨折は65歳の女性の約半分,80歳以上の男性の骨折の約半分に骨粗鬆症が関係しています.

 

2.骨粗鬆症の原因は大きく分けて2つあります.

(1)閉経 女性ホルモンがなくなる→骨吸収の促進→骨の量が減少

閉経後の女性に骨粗鬆症が多い理由:女性ホルモンは骨の吸収を抑制する.

(2)老化 全身の老化の一つとしての骨の老化が骨粗鬆症です.

男性でも骨粗鬆症はおこります.

3.骨粗鬆症は高齢者すべてに発生するものではありません.

骨粗鬆症になりやすい危険因子があります.
(1)年齢,女性,閉経,遺伝

(2)栄養不足,運動不足,多産と未分娩
(3)タバコ,アルコール,胃腸の手術歴,胃腸障害

(4)くすり(ステロイド,抗痙攣剤)
(5)骨を悪くする病気(糖尿病,甲状腺の病気,腎不全など)


*変えることのできない因子:人種,加齢,性別,閉経,遺伝的要素
*変えることのできる因子:たばこ,アルコール,偏食,運動不足

 

4.骨粗鬆症を自分でみつける方法

  • 腰痛,身長が低くなる,背中が丸くなったら要注意.

  • 腰痛が起こる前に発見するには,骨塩量測定の検査を受ける.

 

5.骨粗鬆症の早期発見のための検査:脊椎の骨折を起こす前に発見するには?

(1)X線による骨塩量測定検査

1)手のX線写真 2)DXA(デキサ)検査(腰椎,大腿骨,腕の骨) 3)CT検査

(2)超音波検査 若い女性のスクリーニングに有用

 

6.骨の代謝とは? 骨の吸収と骨の形成の良いバランスが骨量,骨の質を維持

骨の減少の病態には骨吸収が多すぎる場合と,骨形成が減少してしまっている場合がある.

 骨量の減少:骨吸収>骨形成  骨量の維持:骨吸収=骨形成

7.骨代謝の検査

(1)尿の検査:尿中のカルシウム濃度(骨吸収の検査)で,骨から分解された蛋白

        (尿中ピリヂノリン)を測定
(2)血液の検査:骨形成を調べる検査(血清BGP)と血清カルシウム,リンの値が正常範囲内で

         あれば,骨粗鬆症以外の病気で起こる骨減少ではないことが証明される.

 

8.自分でできる骨粗鬆症の予防(若年者~中年)

(1)栄養  カルシウム:若年者 600mg/日   中年 800mg/日

リン:リンはあまり多く摂取しない(リンを多くとるとカルシウムが尿に失われる)
牛乳摂取時の注意:高コレステロール血症
例:骨粗鬆症の治療のため牛乳を摂取しすぎて骨塩量は改善したが,体重の増加,血液中のコレステロールが上昇した症例がある.
牛乳摂取を増やすときは間食を減らして,脂肪の血液検査を忘れぬこと.
高コレステロール血症の人は低脂肪牛乳,脱脂乳がおすすめ.

(2)運動

運動時の注意:1)継続すること.2)競争しないこと.3)体調の悪いときは休む.

       4)膝の具合が悪い方は医師と相談する.

(3)若いときからの注意

若いときの骨塩量を高くしておく.​




平成9年5月17日 シンポジウム 「医療ルネッサンス 青森フォーラム」


「骨粗鬆症」基調講演

東京大学医学部老年病教室  大内尉義教授「骨粗鬆症への備え」より

 

 骨粗鬆症は,痴呆や動脈硬化と並ぶ老年病で,骨が古くなり中身がスカスカになる病気です.健康な骨は,骨梁が縦横に張り巡らされていて丈夫だが,骨粗鬆症の骨は,骨梁が細くてもろい.このため,転んで手をついたり,尻餅をつくなど,ちょっとした力が加わっただけで腕や足の付け根などが骨折する.また,骨が変形して周りの筋肉や神経に負担をかけるため,腰痛を引き起こす.
骨の細胞は,活発な代謝を繰り返しているが,骨粗鬆症の場合,古い骨を溶かす破骨細胞の活動(骨吸収)が,新しい骨を作る骨芽細胞の活動(骨形成)より活発になり,バランスが崩れるために発生するといわれている.
 骨粗鬆症の患者は圧倒的に女性が多く,50~60歳の閉経後にかかる場合と,高齢に伴う場合の二つのタイプに分けられる.女性は,代謝活動が鈍くなる30歳前後から男性に比べて骨梁が少なくなる度合が大きく,さらに閉経後,骨形成を促す女性ホルモンの分泌が急激に低下するため,骨量の減少が加速する.
また,甲状腺機能亢進症やクッシング症候群などのホルモンの異常,副腎皮質ホルモンの長期投与,リューマチ,糖尿病なども骨粗鬆症の原因になることがある.
高齢化に伴い,骨粗鬆症の推定患者数は1990年に全国で500万人.2000年には1200万人,10人に1人がかかると見込まれている.年間の治療費も,87年の推計で1300億円に達しており,日本経済にも大きな影響を与えている.
 また,お年寄りが寝たきりになる原因の20%が骨粗鬆症とのデータもある.大腿骨などを骨折した場合,手術を受けなければ寝たきりになり,その結果,二次的に床擦れなどを起こしてしまう.
骨粗鬆症は一度かかると,完全な回復が難しく,予防と骨量検査による早期発見,早期治療が大切.特に予防は,若いときから骨量を増やすとともに,年をとってからも骨折しにくくする意味で重要.
予防で最も重要なのは食事で,骨を丈夫にするカルシュームは,毎日900mgは摂取すべきで,体に吸収されやすい牛乳や乳製品などを勧める.
また,骨の量を増やす働きがあるビタミンKが多く含まれている納豆も積極的にとってほしい.
さらに,運動や日光浴のほか,お年寄りの場合,転倒の際の衝撃を和らげるパッドを身に着けることも大切な予防策だ.
 骨粗鬆症に対する治療については,今後,女性ホルモンの補充療法やビタミンD,Kの投与などが主流となってくるだろう.また,遺伝子診断の研究が進めば,骨粗鬆症になりやすい人を見つけたり,患者ごとにきめ細かな予防指導も可能になる.
年をとることは,だれにも避けることはできない.それならば,上手に年をとれるよう,骨粗鬆症の予防に努めてほしい.

(平成9年6月3日 読売新聞朝刊より抜粋)

 

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